コンテ作家・アニメ演出家 ヤマトナオミチさんインタビュー

- Q1. 最初にアニメ演出の仕事についてお伺いします。まず、全体像をざっくり教えて下さい。 -
A1. 演出の役割にコンテ作業を入れるか入れないかについて意見が別れるところですが、コンテ後、一般的にアニメ演出の処理と言われる仕事は、各担当者との打ち合わせと素材のチェックですね。
- Q2. 打ち合わせには具体的にどんなものがありますか? -
A2. 依頼を受ける最初の打合せの演出打ちの他、原画さん、作監さん、美術ボード、2DCG、仕上げ背景、撮影等の各打合せがあります。また、作監さんや原画さんのヘルプに対する打ち合わせもあったりなかったりします。
- Q3. では、チェックにはどのようなものがありますか?-
A3. レイアウトチェック、原画チェック、背景チェック、CGチェック、音響に対してコンテからアフレコ台本発注用のコンテに赤入れ、カッティングと言われる編集、アフレコ、ダビング差し替え対策、ダビング差し替え、ダビング、 ラッシュチェック、それに対してのリテイクの対処、最終的に納品直前のビデオ編集時のリテイク案件の対応。これぐらいが最低限やる事でそれ以外に作品や会社、状況によりもっと増えます。
- Q4. 打ち合わせだけでもかなり多岐に渡るんですね。一連の打合せで一貫して心掛けられている事とかありますか?-
A4. 「演出意図を打ち合わせの相手に伝える」ということが打ち合わせにおける演出の役割なのですが、その際、具体的に押さえてこちらの意図するディティールに沿ってもらう部分と、大枠の演出意図の範囲内で相手の価値観に委ねる部分を明確にする、ということは心掛けています。
- Q5. なるほど。そこに拘る理由とは?-
A5. 実際には「上がりを見てやっぱり指示を変更」という事はあり得るのですが、相手の負担の問題、時間的な問題としても、「上がり後の変更」を前提にして仕事をするのは避けるべきだと思うからです。一緒に仕事をして頂く各スタッフの仕事を尊重するために、委ねてお任せする部分と、「上がり後の変更」があり得る部分とを明確にしたいと考えています。
- Q6. 次にチェックの仕事についてお伺いします。一般的な演出チェックの仕事を教えて下さい。 -
A6. クリエイターの成果物を「見る」という点で「チェック」という呼び方をしますが、「チェック」というよりは各クリエイターの成果物である素材の内容、即ち各クリエイターの仕事の結果を把握することがメインの仕事になります。それに加えて、設定との照らし合わせ、サイズ感の対比などの画面情報の調整、演技の構成・誘導等も行います。
- Q7. まさに「演出」って感じですね!。「アニメ演出」という役割についてずっと疑問に思っていることなのですが、そういった仕事は監督も関わる部分だと思うんですけど、演出さんが最低限押さえる範囲等はあるんでしょうか?-
A7. そういった作業をどこまで突き詰めるかというのは、探求の世界に入っていくものになりますが考えていくことや常に求めていくことに限りはないと思っています。今は監督がレイアウト時などにチェックする機会も増え何が必ず押さえなければいけないといえるものも断定の出来ない世界と考えています。
- Q8. では、ヤマトさん自身のアニメ演出に対する信念はどの辺でしょう? -
A8. やはり、夫々のクリエイターのあがりを見て、「チェックする」というよりは「意図を把握する」ということに努めています。絵コンテの分析がスタートですが、各クリエイターの仕事内容を把握し、その意図を次工程のクリエイターに繋ぐことが重要だと考えています。それにより、想定される指摘を経験則により作業上で軽減させることもできます。また、環境やデジタル技術の変化により常に色々な変化が起こっていたり監督や他に関わる人による価値観の差があるのでそれを演出が理解して対応していくことが必要だと考えています。
- Q9. 想定される指摘とは、例えば?-
A9. 例えばほんの一例ですけど、キャラクター毎のサイズ感の対比、背景やオブジェクトとの対比、それに表情や目線、動き等の芝居がシーンに合っているか、等です。
- Q10. 私のアニメ制作の仕事に関する知識はアニメの「SHIROBAKO」に毛が生えた程度なんですが、お話をお伺いしているとヤマトさんの心掛けていることって製作進行さんの役割のような気もするんですが、如何でしょう?-
A10. そう思われてしまうところが、アニメ演出をやっていて苦悩するところです。今話したような演出の役割の難しさや重要性って、なかなか理解し辛いですよね。
- Q11. すいません(汗) 役割としては別なんですね。-
A11. 確かに製作進行さんがそれぞれのクリエイターの仕事をつなぐ上で内容を理解することは理想ですが、演出が理解するべき内容とは違います。
 有能な作画さんのレイアウトや原画でも、それがどういう内容で何がやりたいかを理解出来なければ、作品の中でその素材を活かすことが出来なくなります。そのためには知識や経験が必要になりますが、一朝一夕で身につくものではありません。
 また、シーンをどのような表現にするかも、そのような理解力がなければ、意図した表現を成立させる手立てが掴み取れないまま中途半端に進んでしまいます。
- Q12. なるほど。アニメ見てて「浅いなぁ~」と思うこと、コレはストーリーや設定が浅いということではなくて、画面や場面、作品から伝わってくる全体の雰囲気が浅いということなんですが、そんな風に思うこともあるんですが、そういう作品は演出さんが甘いということですね?-
A12. 一概には言えないと思いますが、そういう場合もあるかもしれません。観る方にそう思われないように、皆さん苦労してると思います。
 →<続いて、アニメの絵コンテ作業についてお話を伺います!>
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